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「この夜の街で一緒に暮らしましょ。あなたのアパートの家賃は少しでもとかき集めて来たの。これで、家賃は半分だけでいい。そして、私の日常の半分をあなたにあげるわ」
彼がこちらを向いた。
無機質な顔に見えるが、ただ頭の半分は眠っているのだけなのだろう。
掃除道具片手の彼は、こうも悲惨な人生を送っていた。
眠らない人。
日の光を知らない人。
それらが、夜の街の人だった。
初めてだった。私は、ちょっと散歩の際にサンサンと照る細道から夜の街へとたどり着いただけ。
そこで、彼と出会った。
もう終わりにしよう。
お日様にはたまには出会えるだろう。
私には彼の方が大事だった。
「わかった。でも、後悔はするなよ」
少しのお金だけで、なんとかなるだろう。
だって、この夜の街の先にはまったく何もないか、何かが待ち受けているだけなのだから。
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