再会

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再会

自分の意思ではなくここへ来ました 気が進まなかったけどここへ来ました でも、もっと早くこなければいけなかったのかも知れません 来てみたら穏やかな空気 小さな川が流れているわ 向こう岸に知り合いがいるみたい その小さな川を素足で入って渡るように言われたの それはなんとも気持ちいいひんやりとした水の流れ あれ? 誰かわたしに手を振っているみたい もうちょっと川に足をつけていたいけど行かなきゃ 行ってみたら夫のヨシハルさんだ それにもう一人男の人が見える そこまで一生懸命歩いて行った あら、ヨシハルさん、なんでここにいるの? 先に来たことを伝えなくて悪かったね みんなもあえて黙っていたんだろ そうだったの また、会えて良かった それはそうとこの方はどなた? あぁ、この人はね すっかり大人になってるけど僕たちの子だよ 流産したことがあっただろう そう、2番目の子 あの子がこの世で大きくなっていたんだ 僕もこの世に来ておしえてもらってわかったんだよ 目元はレイコにそっくりだ えっ・・・ 本当なの? 本当なら、あのとき、丈夫に産んであげられなくてごめんなさいね レイコはしばらく涙を流して頭を下げていた いいえ、僕はこの世で大きくなっていました お母さんに会えて嬉しいです これからは仲良く暮らしましょう と、言って肩を抱いてくれた 川のほとりでは、色々な人たちが再会していた この世に来てもなお、けんかを始める者たちもいて、番人に叱られている 生きていた時の痛みや苦しみはもはや無くなっていた 人間は完璧になるために何度も何度も生き直しダメだったところを勉強するためにいつかまた、あの世に送り込まれるのだ その限られた時をどうやって生きたかがその次の機会に繋がるらしい 人間でいる間にせいぜい精進しなさいと でないと、次回は人間ではないかも知れませんよ 果たしてわたしはちゃんと生きられたかしら これから、人生絵巻が流れるらしい 観て反省したり、懐かしんだり喜んだり泣いたりするんでしょうね 泣いているのが多いみたい 今度いつかまた生き直して来いと言われたら笑える時間を増やしたい それは何百年もあとのことになりそうだけど ほら、整理券に並ぶ人々の列は終わりが見えないものね やっぱりみんな生き直したいものなのよ
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