1人が本棚に入れています
本棚に追加
「あぁ 自分の過去を詳しく話しておいたほうがいいかな?」
シュウが生まれ育った家庭は、かなり悲惨だった、父は母と結婚すると急に暴力的になり、あとうことか自分の両親にまで暴力を振るっていた。
給料もほんの少ししか母に与えていなかったので、母は自分の使うお金を切り詰めて、シュウを育てていた、シュウ自身父親の記憶は全く無く、覚えているのは父親の怒鳴り声のみ。
だがそんな父は、シュウが二歳になるとこの世から去ってしまう、会社仲間と一緒に飲み会をした際、父は飲酒運転をしている同僚の車に同伴。
車はそのまま海に飛び込み、数人の同僚と父は翌日遺体となって見つかった、母とシュウにとっては願ってもいない幸運だったのだが、同時に二人は、自分達の生活を支えてくれる存在を失ってしまう。
父と母の祖父母は、幼いシュウの面倒を積極的に見てあげた、それが孫のシュウにできる義務でもあり、罪滅ぼしでもあったのだ、その間母は、休む事無くパートで働き続けた。
せめて息子のシュウを育てるお金だけでも自分で稼ごうと、母は様々なパート・アルバイトをしながら、シュウを支え続けていた、どんなに忙しい日でもシュウとのスキンシップは忘れずに、休憩時間の合間を縫っては、シュウの通っていた幼稚園に顔を出していた。
保育士やパート仲間達からも尊敬されたシュウの母は、息子にとっても自慢の母だった、彼は幼い頃から逞しい夢を持っていた、いつか母を支えられる様な立派な大人に成長して、母に楽をさせてあげたかったのだ。
だが、シュウがそんな未来を抱いていた矢先、幼稚園を卒園して小学校に入学した数ヶ月後の事だった、パートを終えた母は、シュウの待っている母の実家に帰る途中、通り魔に刺されてしまったのだ、そして運悪く母はそのまま即死してしまう。
母の他にも数名被害者がいるのだが、亡くなったのはシュウの母のみ、その他の被害者は負傷で済んだのだ、しかもその通り魔は事件を起こした直後に、自らの喉を突き刺し自殺。
話を聞いたシュウはあまりにも急な出来事に信じられなかった、だが病院の霊安室で真っ白になった母を見た時、シュウは泣き崩れてしまい、数週間はずっと泣いたままだった。
亡くなった母にとって唯一の家族である幼いシユウが、そんな精神状態で葬式などには当然参加できない、そう思っていた親戚一同だったが、シュウはとても強かった、きちんと葬式に参加して、涙を流しながらも母の位牌を持つという大役を務めたのだ。
それからシュウは、自分の成長の為に自ら施設に入ることを所望して、父母の祖父母の承諾を得て、小学五年生まではずっと施設で過ごしていた。
最初のコメントを投稿しよう!