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相棒のその先に
「すっげぇ! 美味っ! 何コレ、お前天才か!」
「口に合ったようなら何よりだ。とりあえず落ち着いて食え」
目の前に並べられた夕食に目を輝かせた士朗は「いただきます!」と手を合わせた後、一口頬張って更にキラキラとした視線を雪哉に投げる。つい先程、士朗の尊敬の眼差しを呼び込んだ従兄に嫉妬したばかりだったはずなのに、それも吹き飛ぶ位に可愛いその姿にを手に入れて気分が上がるなんて現金だなと苦笑している雪哉の気持ちには全く気付かないまま、士朗はにこにこと頬いっぱいに食事を頬張っていた。
箸を止めたまま、そんな士朗の食べ続ける姿をじっと見ている雪哉に士朗は首を傾げる。
「……どうした?」
「お前、ほんと素直な」
「意味が良くわからないんだけど」
「美味しそうに食うな、って事だよ」
「だって美味いもん。ゲームも一緒に出来て美味い飯も食わせて貰えるとか、雪哉が一人暮らしだったら入り浸る自信あるわ」
「……高校卒業したらするつもりだから、いつでも来たら良い」
「そうなのか? そりゃ有り難いけど、志望校遠いの?」
「そういう訳じゃないが、前々からこのタイミングで家は出るつもりだったんだ」
「へぇ、雪哉って何か色々とちゃんと考えてるんだな。部屋も何か難しい本ばっかり置いてあったし」
「お前……エロ本探しただろ」
「なんでわかったんだよ!」
「じゃないと、お前が俺の本棚に興味を示す理由がない」
「ちょ、酷ぇ! でも間違ってないのがまた悔しい! しかも見つけられなかったし!」
「そう簡単に見つかるような場所には置いてない」
「あ、興味ないわけじゃないんだ」
「俺も男だからな」
「雪哉の好みってどんな子?」
「……わかって聞いてる訳じゃ、ないんだよな?」
「ん? どういうこと?」
「いや……まぁ、可愛い系……かな」
「ふぅん……」
「おい、なんでちょっと機嫌悪くなってるんだ?」
「別に、悪くなってないし」
「お前、わかりやすいんだから嘘ついてもすぐバレバレだぞ。何だ、もしかして「俺の好きなのはお前だよ」とか言って欲しかった?」
「ばっ……違う!」
「え……? 本当にそうなのか」
「だから、違うってば!」
士朗は雪哉の好みを聞いて機嫌を悪くしたつもりはなかったのに、重ねられた言葉に過剰に反応してしまったからだろうか、雪哉が目を見開いている。
士朗も何故こんな反応をしてしまったのか自分でもわからない。段々と顔が赤くなってしまっている様な気がするのは、事実だからではないと信じたい。
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