#2 出会い:十五年前ふたりの始まり

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#2 出会い:十五年前ふたりの始まり

 濃紺のプリーツからすらりと伸びた足、柔く白い肌、真っ直ぐにすとんと落ちる黒髪、顔立ちは派手ではないが涼やかで品がある。誰をも惹きつける容姿であるにもかかわらず、いつも教室の隅の方にいてあまり目立たない。大学付属の高校に片親は珍しいようで、触れてはいけないと思っているのか、彼女に家庭環境を訊ねるクラスメイトもいなかった。元来大人しく人見知りで自分から声をかけることもないため、由璃子は入学してから数週間経っても高校生活に馴染めなかった。  ひとりでいる方が少しは気が休まるかもしれないと、昼休みに屋上へ行ってみたのは一ヶ月が過ぎた頃、五月の連休が明けた頃だった。そこは風が吹き抜け空が広く開放的で。陽を浴びて思いきり息を吸い込んだ由璃子は、冷えて固まっていた心も身体も解けていくのを感じた。  心地よい居場所を見つけてからは、毎日屋上でひとり静かに昼食の時間を過ごしていた。
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