#18 紐とかれていく:あの日から

15/15
前へ
/229ページ
次へ
 透矢と由璃子を見送ると、麗華は入江のそばへやって来て訊ねた。 「入江くん、あのふたり……」 「ああ、そうか。麗華さんは知らないんですよね」 「え? どういうこと?」 「あれは透矢さん」 「ええ、知っているわ、さっき望月先生から聞いた」 「そして、彼女は由璃子さん」 「え、ええ、そうね」 「透矢さんの奥様だそうです」 「……え」 「由璃子さんのもとから居なくなってしまった人、それが、透矢さん」  麗華がふっと笑った。そして、肩を揺らして大きく笑った。 「まったく、あのふたりは」 「ええ、本当に」 「結局、彼は由璃子さんを愛し続けたってことね」 「そうですね」 「ねえ、入江くん。樹が、彼が由璃子さんに出会ったのはやっぱり必然だったのね」 「そしてふたりがまた出会うのは、決まっていたことなんでしょうね」 「運命ってことね」
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

433人が本棚に入れています
本棚に追加