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透矢と由璃子を見送ると、麗華は入江のそばへやって来て訊ねた。
「入江くん、あのふたり……」
「ああ、そうか。麗華さんは知らないんですよね」
「え? どういうこと?」
「あれは透矢さん」
「ええ、知っているわ、さっき望月先生から聞いた」
「そして、彼女は由璃子さん」
「え、ええ、そうね」
「透矢さんの奥様だそうです」
「……え」
「由璃子さんのもとから居なくなってしまった人、それが、透矢さん」
麗華がふっと笑った。そして、肩を揺らして大きく笑った。
「まったく、あのふたりは」
「ええ、本当に」
「結局、彼は由璃子さんを愛し続けたってことね」
「そうですね」
「ねえ、入江くん。樹が、彼が由璃子さんに出会ったのはやっぱり必然だったのね」
「そしてふたりがまた出会うのは、決まっていたことなんでしょうね」
「運命ってことね」
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