#19 取り戻す:すべてはこの腕の中に

3/19
前へ
/229ページ
次へ
 ダイニングチェアから立ち上がった透矢は、リビングへ向かった。 ソファの前に膝をつくと、勢いよくガバリと由璃子を抱きしめた。  あまりにもぎゅうぎゅうと力強く抱きしめるので、透矢の腕の中で由璃子が動きだした。 ——ああ、ごめん、寝かせてあげようと思っていたのに 「ん……」 「由璃」 「……とう、や……どうしたの」  わからない。いまは何もかもがよくわからないんだ。嬉しいのか苦しいのか、それすらも。    でも……  いまこうやって、由璃がここにいること、一緒にいられること、いまはこれだけでいい。  しばらくの間、透矢はしがみつくように由璃子を抱きしめていた。
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

433人が本棚に入れています
本棚に追加