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「写真を、望月先生に……知らなかった」
目覚めた由璃子に、透矢が望月から聞いたこと、渡された写真のことを説明した。
「由璃は望月先生を知ってた?」
「話は聞いていたけど、私は会ったことはないの。……とても信頼してるって言ってた」
「そう…………。ねえ、由璃。聞いていい?」
「なに?」
「どうしてさっき、僕だったことを教えてくれなかったの。望月先生はたしかに知らなかったんだろうけど、由璃も入江さんも知っていたんだよね」
由璃子は目を微かに彷徨わせて、少し震える声で言った。
「臆病なの……私」
「どういうこと……?」
「透矢が居なくなったのには……何か理由があるなら、それを……
「由璃、こっち見て」
由璃子の言葉を遮るように、目を伏せたままの彼女の頬に手をかけて、透矢はその瞳を覗き込んだ。
「まだ、あの日のことは全部思い出せないんだ。でもあの日、アルバムを、結綺さんのところにアルバムを取りに行ったんだ。そこまでは覚えてる」
「……え……でも、アルバムは」
「うん、受け取れなかったみたい。行く途中に何かあったんだと思う」
「そう……」
「入籍の日に、由璃を驚かせようと思って内緒で作っていたんだ。だから結綺さんにも自宅には送らないでって頼んでいて」
自分で渡したかったし、由璃の喜ぶ顔が見たかったから。
そう言って透矢は由璃子の頬をゆるりと撫でた。
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