#19 取り戻す:すべてはこの腕の中に

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 目を閉じると、頬に伝わる温もりがより感じられて、由璃子は薄く開いた唇から微かに息をこぼした。ゆっくりと目を開けると、遠くを見ながら呟いた。 「スマートフォンを……」  やっと聞き取れるほどの声に、透矢が優しくその先を促した。 「え、なに?」 「……あの日、透矢が帰ってこなかった日、スマートフォンを置いていった」  由璃子が何を言いたいのか、何に怯えているのかわからない透矢は、ゆるく首を傾けながら注意深く彼女を見ていた。 「……探さないでほしいっていう意思表示かと思って。だから……」  透矢がはっとして由璃子を見ると唇をぎゅっと結んでいた。 「それが由璃を苦しめていたんだね……ごめん……」  そう、あの日結綺のところへ向かう途中、約束の時間に少し遅れそうだと連絡をしようとして……いつものポケットにスマートフォンはなかった、しまった、忘れてきたと…… 「ああ、由璃、ごめん。忘れた、みたいだ」 「え?」 「だから、あの日、電話を持っていくのを忘れたんだ……出先で気づいたんだけど」 「え、」 「……」 「えええ……わすれ、た……忘れたの? そんな……」 「ごめん」  残されたスマートフォンを見て、由璃子がどれほど苦しんだか、考えただけで透矢の方が泣きだしそうになっていたけれど……
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