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音もなく吹きつける細かい霧状の雨。夜明け前から雨模様で、もう昼になるけれどカーテンの外は薄暗いままだった。昨日は一日に起こる出来事をはるかに超えて、そのすべてを咀嚼できていないなか、心身ともに受けた疲労が限界を超えて。ふたりして倒れこむように眠った。それでもきっと疲れだけではない、安心したからかこの腕の中に由璃子がいるからか……相当深い眠りだったのだろう。ずっと重みを感じていた透矢の頭はだいぶすっきりとしていた。
先に目覚めた透矢は、由璃子のまぶたを指でなぞると耳元でささやいた。
「おはよう」
もう起こしてもいいだろう。由璃子ももぞもぞと動いていた。
「……んん、」
「由璃、起きて」
「……うん……」
「お腹がすいたよ」
「うん、ふふ、そうね」
昨日はいつの間にか寝てしまって、たいして食べていないから。
今日は日曜、いつもなら目覚めてもしばらくはベッドの中で微睡んでいるふたりだったけれど。透矢はよほどお腹がすいているようで、掛け布団をぱっとめくると、まだ半分寝ぼけている由璃子ごと上体を起こした。今日も話さなければいけないことがたくさんある。まずはお腹を満たしてから、そう考えながら彼女を抱えてキッチンへ向かった。
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