みりん干し

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 素っ裸になって、ハロゲンヒーターの前に体育座りをする。すねだけがジリジリと焼かれていく。火傷をするほどでもないけれど、確実に炙られていた。  私は、小学校の頃に祖母が焼いたみりん干しを思い出していた。石油ストーブの上で身を悶えさせるようによじりながら元は海を泳いでいたはずの魚が身を焦がす。しばらくするとあの独特の甘ったるい匂いがプン、と漂ってくる。  どうせ焼かれるなら、こんがりと美味しく焼かれたい。  私が焼かれるときは、美味しい匂いがするといい、そんなことを思いながら暗い部屋の中で、狂気的と言えそうなほど真っ赤な電熱線をじいっと睨んでいた。
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