さらなる復興

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最新のシールドマシンは効率よく働き、掘削は予定よりも早く進んだ。耐震設計も組み込まれ、漏水対策も充分なものが施された。 新卒1年目の秋、江戸川トンネルはついに完成した。暫定的なものではあったが、片側2車線の対面通行、将来的には同じ規模のものを併設し、それぞれを4車線の一方通行として運用する予定であった。 開通式の日、江戸川の川面は静かだった。霧も無く、清々しい風がさざ波を立て、赤トンボが飛んでいた。 橋や渡しの時のようなことは何も起こらなかった。龍神は今度は怒らなかったようだ。 小岩駅と市川駅を結ぶ、橋消失後最初のバスがトンネルを無事に通過したことを確認し、お祭騒ぎのような盛り上がりを見せたのを、まるで昨日のことのように僕は思い出す。みんな笑顔だった。 そして誰もが、これでやっと以前のような日々が戻って来ると思っていたある日、例の大地震が起こった。
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