"Across the eyes"

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"Across the eyes"

 手を繋いで歩く2人。親し気に顔を寄せ合っている。私たちの目の前にいるのはそんな人たちばかりだ。  イルミネーションが綺麗なこの公園は、テレビでも紹介された評判のデートスポット。周りにはカップルしかいない。漂う甘い空気。 「綺麗だね」 「そうだね。来て良かった」  私たちもにこにこと微笑みあう。噂通り本当に美しく、2人で来て良かったと思えた。たまに飛んでくる視線をやり過ごして、ライトで縁取られた木々やゲートを眺めながら、歩く。その甘い人混みの中には、時折口付けを交わし合う人たちもいた。  でも私たちは……何もできない。歯がゆさとやるせなさが、寒々とした宵闇に溶けていく。  触れたいその手を掴むこともできずに、私は人の群れを再び見た。 「あぁでも、笑えるほど……男と女しかいないんだね」  私の恋人————文乃がそう零し、私は頷いた。  同性同士のカップルでここに来ていたのは、私たちだけだった。
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