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いずれにしても、この状況下ではもし連絡先を知っていても、先輩に連絡する勇気なんて私には無かった。
気が付くと、もう午後四時になっていた。
『私、すっぽかされたみたいね・・。』
と自分に言い聞かせるように呟き、重い足を引きずるようにして店を出た。
おなか空いたのと惨めなのとで、涙が溢れてきた。
『美晴、あなたはそんなに弱い娘じゃないでしょ!しっかりして!』
と、自分に言い聞かせてみたものの、涙はさらに溢れてきた。
自宅への帰り道、泣きつかれた私は、丘の上にあるマテキ公園入り口付近にある、ベンチで一休みすることにした。
ここは、街の中心部から近い割に眺めがいいので、カップル達が夜景を見るのに良く使う場所でもあった。
しかし、こんな夕暮れにはあまりにも物騒すぎて、普段の私であれば、ひとりで来る勇気など到底持ち合わせてはいなかった。
でも、今日は別だった。
ベンチに座って泣きじゃくる私を周囲のカップルたちは遠巻きに見ていたが、誰も声をかけてはこなかった。
それは逆に好都合であった。
ひとしきり泣いた後で、どうにか気力を取り戻した私は、ベンチから立ち上がろうとした。
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