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目の前に誰もいないかのような独り言と愚痴から推測するに、この変な生き物は、私に自分の存在が見えているとは思っていないようである。
しかし、その内容が明らかに私に対する暴言であったため、この変な生き物への不可解な思い以上に、ふつふつと怒りがわいてきた。
私:
「あの・・私、見えてますよ。」
と、この小さい頃に見ていた絵本から出てきたような、妖精みたいな変な生き物にいってみたが、相変わらずぶつぶつ言っているだけだった。
耳が悪いのか、それとも私に見えているとは思っていないのか。
そこで、今度は大きな声で言ってみた。
私:
「あのっ!見えてるし聞こえてますよっ!」
そういった瞬間、周囲にいたカップルたちは私を一瞥してすべからく席を立った。
やはり、他の人にはこの変な生き物は見えていないようであった。
私には、周囲への恥ずかしさ以上に、この目の前の非日常的な事物をどうにかすることが重要であった。
とりあえず、暴言は撤回してもらわないとね。
その変な生き物は、ようやく見られていることに気づいたのか、リュックから自分サイズの携帯電話らしきものを取り出し、何の断りも無く私をモバイルカメラで撮影し、さらにそれを写メにしてどこかに送信したのであった。
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