第六話:多くの芸術家がそうであるように、科学者もマイワールドの中で生きているのね。

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 で、研究の結果、少しだけ見えてきたものがあってね。  この世界には、私たちの住む世界と、私たちの世界に酷似した世界があって、それらはすぐ隣り合わせの世界なんだけど、お互いが、特別な干渉をしない限りは、お互い触れ合うことは出来ないみたいだ。  一つは、物質に恵まれていたために、物質に依存して、それに特化して形成されていった私たちが住む世界で、それゆえに、この世界に生きる生物には時間が限られることになった。    もうひとつは、物質に恵まれなかったために、精神に特化して形成されていったエルフィンたちが住む世界で、それゆえに、その世界で生きる生物に与えられた時間は、わたしたちのそれよりも遥かに長い。  つまり、エルフィンたちをこっちの世界に召還して、こちらの世界に物質化して留めるために、縄文時代に生きた技工士たちはあらゆる形の魔法道具を作り出した。  しかし、それがきっかけとなって、世界の均衡が崩れ始めたんだ。 こちらの物質世界での問題は、そのままエルフィンたちの世界にも悪影響を及ぼす。 こちらの世界とエルフィンの世界は表裏一体の世界なんだ。 片方の世界の破滅は、もうひとつの世界の破滅にもなるんだ。 それを止めるため、先人達はアーリマンを封印したのだが、再び世界の均衡が崩れ始めたため、その封印が解かれつつある。  今言ったことは、あくまでも仮説だけど、実際に私たちはエルフィンというあちら側の世界の者と接触しただけではなく、エルフィンマスターとなったんだ。 あながち外れてはいないと思うよ。 美晴ちゃんだっけ? あんたの目的はよく解ったよ。 必要なときは、いつでも力を貸すよ。」 と言ってくれた。 安土さんて、さすがは科学者。 そんなこと考えてもみなかったし、ルナに尋ねてみるという発想もなかった。
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