プロローグ

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20xx年、冬。 ゆっくりと意識が浮上し、目を開けるとまだ空は暗かった。 アラームの前に目が覚めてしまったことに気がついた俺は、何となく寝た姿勢のまま耳を澄ましてみる。 …今日もこの家は異様な程静かだ。 自分がたてる布擦れの音以外、物音は全く聞こえない。両親はそれぞれの恋人のところに行っているのだろうということは簡単に推測できた。もう2週間ほど会っていないけれど、それも別に珍しいことではなかった。 身体を起こし電気をつけると、鮮やかな黄色の小鳥が俺の元にパタパタと飛んでくる。 大好きな、唯一心を許す家族。 セキセイインコの”コメ”だ。 物心ついた時から家族間が冷えきっていることに対する寂しさは、コメのお陰で薄くなった。言葉は通じないけれど、何故かお互いの気持ちがよく分かるような気がしていた。 「タケルッ!!ヨッ…オハヨッ!!!!」 「ふふっ、おはよう。コメ」 こうして、俺_”高橋タケル”の日常は始まる。 1人と1羽で住むには余りにも広すぎる家を出て、近所の高校に行く。今日は今年1番の冷え込みらしく、吐く息は真白になった。 高校では、そこまで親しくもない友達と、それなりに楽しく過ごす。小学生のうちは仲のいい友達もいたが、自分が同性愛者_つまり、ゲイという部類に入るのだ、と気づいてからは、仲良くなりすぎることが怖くなってしまった。 同性愛者であることを隠さず、明るく生活している人が正直、すごく羨ましい。 ただ、ネコ志望_抱かれたい側であるのに、身長は180㎝で、中学まで野球をしていたせいでだいぶ筋肉のある体。可愛らしくもなく、初対面の人に怖がられたりさえもする顔では、自分には恋人はできないだろう、と自信を持つことなどはできなかった。 好きにならなければ傷つくこともない、と気がついてからは、どんなに気があっても一定の距離を保つことにしていた。
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