第7話

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第7話

第7話:旅の続き。  それから2年が経過しようとしていた。  私は魔笛と共に旅を続けていた。その間に、種種様々な人々に出会った。そして色んな人と笛の音を共有することが出来た。  魔笛は本当にすばらしい楽器で、私の表現したい音色を的確に奏でてくれた。いつでも、どんなときでも、そしてこれからも。  この二年間に出会った人の中には、牧師やゴミ拾いの少年や、罪を犯した刑務所帰りの人、それから夫婦仲で悩む女性、商人、酒浸りの青年、実に様々だった。  私は最近、時々起きる激しい胸痛と咳に悩まされていた。一度医師に診てもらおうか。そう思っていた矢先の出来事だった。私は路上演奏中に胸に激痛を覚えそのまま意識を失ってしまっていた。  気がつくと、そこは病院の一室であった。ふと横を見ると、そこには一人の男性看護師が立っていた。  「気がつきましたか?大丈夫ですか?」 とその看護師は私に尋ねた。私は左腕に刺さっている点滴針のせいで意識が朦朧としていたが、なんとか口を開けてそれに答えた。  「え、えぇ、大丈夫だとおもいます、多分…」  「では、今のあなたの住所と職業を教えてください。」 と看護師は尋ねてきた。  「私、生まれはルーセルの田舎町。今は旅人としていろいろな場所で笛を吹き、旅を続けています。」 と私は答えた。  「ああ、それでだね。」 と看護師。  「なんですか?」 と私。  「多分長旅で疲れが溜まっていたのでしょう。あなた流行病に罹患していますよ。でもまぁ、3週間ぐらいで完治するでしょうから、それまではそこで寝ていてくださいね。」  とその看護師はあくまで事務的といった感じで、言い終わったらさっさとどこかへ行ってしまった。  『モルデント、モルデントは今頃なにをしているだろうか? 元気で日々を暮らしているだろうか?』  ふと私の脳裏にモルデントのことが思い浮かんだ。人は病気になった時に愛しい人のことを思い出すというが、どうやらそれは本当らしい。退院したらモルデントの所へ帰ろうか・・。  しかし、2年も前に旅立った私を彼女は許してくれるだろうか?許されるはずもない。 自業自得だ。  とにかくダウランドに向かい、そしてモルデントに会って自分の身勝手を謝ろう。私は病院を抜け出して再び旅に出ることにした。モルデントに会うために。
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