第3幕

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第3幕

第3幕: 真っ白な世界・・・。 この真っ白な世界にいるのは、私とツキ、2人だけだった。 どれくらいの時間が経ったのだろう?私はツキに、涙でくしゃくしゃになりながらも今の気持ちを語った。 「ねぇ、ツキ、私、ずっとこの真っ白な世界に居たい気もするし、でも、ずっとここに居てはいけない気もするの。 ねぇ、ツキ、あの少年はその後どうなったの?あの魔法剣士は何故いつもあの人たちを殺すの?」 と私が言った後で、ツキは私の手をそっと握り、 「あの少年が中学生になって、シマウマの一家は街中に引っ越したの。 そして少年はまもなく高校生になり、環境が変わったことにより、以前のように肉体的な暴力を受けることはなくなったわ。 でも依然として、言葉による暴力は続いていたわ。 それでも少年は、幼いころより夢見ていた笛吹きになるための努力を始めたの。 鬼や悪魔によって、家で吹くことや吹奏楽に入ることは許されなかったけど、放課後とかを利用して少しずつ練習を始めたの。 友人や高校の教師もその才能を認めていろいろアドバイスをくれて、少年はここにきて始めて生きている実感を得たわ。 それから少年はアルバイトを初め、少しずつお金を貯め、高校卒業と同時に遠くの町で一人暮らしを始めて、働きながら夢に向かって歩み始めたわ。」 それを聞いて、私の気持ちは少しだけ軽くなった。 さらにツキは続けた。 「魔法剣士に関しては、私がどれだけ説明しても、多分理解できないと思うわ。だから、それは和音自身の目で見て確かめて。」 と、そうツキが言ったとたんに、またも視界が揺らいだ。
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