第6幕

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第6幕

第6幕:笛吹き:全ての始まり  そこは、10月の柔らかい日差しが差し込む、小学校の体育館であった。  今日はこの場所で、木管楽器奏者と、打楽器奏者の8名で結成された、クラッシック音楽グループのコンサートが開催されることになっていた。  まだ10歳になる前の少女であった和音は、この日を心待ちにしていた。  やがてコンサートが始まり、その美しい音楽と音色に心を奪われた。 何よりも、始めて見て聴いた本物の楽器の中で、フルートの美しい音色とその姿に心がときめいた。 そのコンサートが終わった後で、友人たち数人と小学校の裏山に登り、夕日で真っ赤に染まった美しい西の空をみながら、今日のコンサートでのフルートを思い出し、和音はいつかきっと自分もフルート奏者になることを決意したのだった。  それから12年後、和音は周囲からその才能を見出され、苦労しながら進学してフルート奏者になっていた。 しかし、デビューコンサートの時、ホールに立った瞬間、和音は急に立ち尽くしてしまった。 観客の無数の目が、あのときの鬼や悪魔の目に見えたのだった。  その後、何とか和音はコンサートを終わらせるも、失意のどん底に落ち、もはや自分の存在価値さえも見出せなくなり、舞台裏をそそくさと出て、住んでいる賃貸のマンションに戻ってから、服薬とリストカットにて自殺を図ったのであった。  「そう、そうだったわね。私はこの事実からも逃げて、あの真っ白い世界に逃げ込んだのね。 ありがとう、みんなのおかげでここにもどってきたわ。 みんなのおかげでここに戻る勇気が湧いたのよ。本当にありがとう。」 と私は、私自身の中に住んでいた少年やツキや魔法剣士に感謝した。
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