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第7幕
第7幕:
次に気づいたとき、私は冷え切った浴槽の中にいた。
左手首が疼き、そこから流れでた血液で浴槽の水は赤一色に染まっていた。
私は、なんとかそこから這い上がり、血が足りないせいか、ざりざりする口の中と、まだ少しぼぅっとする意識の中で、体を乾いたタオルで拭きながら、自分自身が生きていることに感謝した。
そして彼らのために、何よりも自分自身のために、もう二度と生きることを諦めないと心に誓った。
左手の傷は、自分自身で手当した。
その数時間後、ドアのベルが鳴った。
私は恐る恐るドアの覗き窓から外を見た。そこに立っていたのは、コンサートホールの支配人であった。
手にはたくさんの花束を持っていた。
私はあわてて衣服を整えてから玄関の鍵を開けドアを開いた。
支配人は私に、
「お客さん、終わった後も君を探していたよ。
なんでそそくさと帰ったりしたの?
今日のコンサートのこと気にしているんだろうけど、コンサートに立って、恐怖や緊張をしないプレイヤーなんていないよ。
それにね、
今日のコンサートなかなか良かったよ。
はいこれ、君を応援してくれている人はたくさんいるんだから、辛いことがあっても、諦めちゃだめだよ。」
と言い、両手で抱えていたたくさんの花束を私に渡し、
「じゃ、後片付けがあるからホールに帰るよ。」
と言って、支配人はコンサートホールへと帰っていった。
花束の中には、私宛へのメッセージカードが何枚か入っていた。
私はそれらを読みながら、生きていて無駄ではなかったと実感し、同時に生きていることに感謝したのであった。
おわり。
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