あのバカ!

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あのバカ!

憎くて憎くてたまらない相手に向けて、相手を一撃で殺すことが可能である強力な対抗策を知られないように残しておいて【こちらはいつでもお前を殺せるんだ】と密やかに心の中でほくそ笑んでいる人の話を読んだことがある。 わたしが心底感謝した相手は、何度も自分を助けてくれた両親と、この物語の作者くらいだろう。 天啓だ、と思った。なにせわたしには物語に出会った当時よりもずっとずっと前から嫌いで嫌いでたまらない相手がいたから。 まあ....実際は殺さないのだけれど。自分にとっての【お守り】を持っておくことで少しでも心の平穏を保っておきたい、というやつだ。 ある時はわたしが好きな人がいると知れば『あの子はお前のこと好きみたいだけど、あの子の運命の相手は僕だから』と宣い、あらゆる手段を使ってわたしが恋した人を無慈悲にも遠ざけ。 またある時はわたしが風邪をひいたと知れば私が苦手なものだと知っているくせに体にいいからと梅干しとネギが入ったお粥を大量に作って押し掛けてきて。 更にある時にはひた隠しにしていたにも関わらず、何処からかわたしが女性警察官を目指していると知ると、『危ない仕事はしてほしくない』と自分が持ちうるコネのカードをフルに切り道を断ってきたこともある相手への【お守り】。 最近ようやく手に入れることが出来た。 「あー、あいつのこと考えたらまーたイライラしてきた。落ち着け落ち着け。今の私にはあれが....え」 ない。 ない。 ない。 なーーーーーーい! 「なんで!?どうして!?確かに机の中の隠し棚に入れといたのに!アイスピック!」 影も形もない。おかしい。絶対おかしい。と必死に探していた時。 「あれ....なんだろ、この紙」 【これは危ないから持って帰るね。大好きだよ。君のことが愛しくてたまらない幼なじみより】 「....あっの....クソバカ過保護ストーカー金持ちボンボン腐れ縁幼なじみがアアアアアアァ!!!!!!!」 ああもう!やっぱりあいつが 大嫌い!
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