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皆が、ユディアの言葉を待っている。
そのプレッシャーは想像もつかないほどの重圧だろう。
ジェフリはその体を支えながら、彼女が決して諦めず切り抜ける方法を探しているのを感じていた。
絶望という安易な場所に逃げず。
泥のような事態に絡め取られてもなお。
次の未来を掴もうとする覇気。
ハンベルトが生まれながらの王者と賛美した、資質なのだ。
「ユディア。君が知っている事で、リオプレインや……みんなの力を借りられるヒントが隠れているかもしれない。話してくれないか……俺も、君の力になりたいんだ」
「ジェフリ。それにリオプレイン……アエノン。ヘリオット卿……わたくしは王嗣ですらない。ただの王女にすぎません。祭祀としての役割も何も知らずに生きてきました。魔法のような力があるのでも無いのですよ。それどころか、吸血鬼にうかつにも襲われ、もしかすると凶暴化するかもしれない。こんなわたくしに何ができると言うのでしょうか」
胸にわだかまっていた不安をすべて吐き出し、ユディアはふうっと息を吐き出した。
イリナス皇太子を身ごもる前。
女王アルテミアにはお気に入りの女官がいた。
歌手のミステス・フランクリン。
そのころ塞ぎがちだった女王を慰めようと大公フィッツジェラルドが連れてきた美貌の歌手は、人の心を掴むのがうまかった
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