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仕事を選ばなければ、食べるのには困らないくらいには国は機能し始めていたが、ジェフリは生まれ育ったアウグストス教会の周囲で仕事を見つけることができずに首都に出る決心をしたのだった。
ぼんやりと、馬車の中から工事があちこちで始まった街を見ていたジェフリの肩を、リュヘルが叩いた。
「そこの自警団に寄る。ジェフリもついてきてくれ」
どんどんと天井を拳で叩いて、御者に止まるように指示をしたリュヘルは深紅のローブの袖を器用にさばいて、まだ完全に止まっていない馬車から飛び降りた。
「まったく……寄り道をしている暇は無いんだぞっ」
ハンベルトもその背中を追う。
そこは商工会議所があった場所で、半壊した建物を元通りにするために本来積まれていた石を選別するための作業場だった。
気が遠くなるような根気のいる作業を、たくましい男達に混じって女や子どもも元気に働いている。
ここで働けば食事にありつけるらしく、飯場が設置されクリームシチューの香りが漂っていた。途端に空腹を覚えたジェフリの腹が鳴った。
それに気がついたリュヘルの目元がちらりと緩んだ。
「たしかに美味しそうだな」
「リュヘル道士もクリームシチューを食べることがあるのですか」
「クリームシチューの原点は我々が言うところの銀河の粥。黄道の並列明けに皆で食べる縁起の良い食べ物だ」
「へええ……クリームシチューが太陽神ラームに由来した食べ物だったなんて知りませんでしたよ」
「うまい食べ物は、信義を越えて広まるものだ。我々は瞑想に入ると絶食だ……空腹だから、ひときわ旨く感じるんだろう」
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