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「大公フィッツジェラルドが、首都ミュリスでミステス・フランクリンのコンサートがあるって言っていた。自分は三つの錘の会合に出るからユディア王女が出席するって……記者達が記事にするって興奮していたから間違いない」
ユディアは、厳しい表情をさらに引き締め、これ以上無いほど固い笑みを浮かべてジェフリの腕を離して、その場にいたみんなを見渡した。
「三つの錘……すなわちカテキナ国、フィルレアル国、オル・セコイア国。この三国と我がダステレミア王国が決裂しているのは周知の事実で、大公フィッツジェラルド殿下は連合に復帰したいと表明しています。その仲立ちを出身国であるノルスバーン公国が取り持つ。とてもわかりやすい構図ですが、このなかで主導権を握りたいと大公殿下が考えたら、何をすべきでしょうか」
答えが見えてきた。
ユディアは自分の心の奥深くに澱んでいた、様々な感情が意思を持ちうごめき始めるのを感じ取っていた。
そのすべてを冷静に制御しなくてはならない。
焦ってもいけない。
慎重になりすぎてもいけない。
今、何をすべきなのか……自分に与えられたのは、ここにいるイザルダをリーダーとするリオプレイン、鍵番、ヘリオット卿に魔の手のジェフリ。
大軍を擁する勢力と闘うにはあまりにも心許ないけれども、少なくともひとりぼっちでない。
その時、また、うおおおん……と、獣の鳴声が響いた。
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