④リアド・トラクス心臓 ②

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 その時、ぽおお……と列車の汽笛が聞こえてきた。  女王アルテミアがリアド・トラクス(三つの錘)の証人喚問に呼び出されたのだ。  近衛兵団は数名の護衛をつけることを条件に女王を受け渡した。  ここまでは予定通りだ。  シエレンは、最後に娘と息子に会えて、女王が少しでも心を安らかにしてくれたらと願っていた自分が、いかに甘かったかと忸怩たる思いでいる。  かえって、二人の子供を傷つける結果になってしまったではないか。  ユディアの燃えるような艶やかな赤い髪が、日の光に輝き、幼さの残る横顔が戸惑い、揺れていたのを思い出し胸の奥が締め付けられた。  また、笑顔で再会できる日が来ることを祈るしかない。  テントの外から車が次々と到着する音がする。  カエキリア近衛兵団長がせかせかとした足どりで近づいてきた。 「シエレン、車の用意ができた。皇太子イリナス殿下を冬の離宮(ノーザンムーク)の王座にお連れする。主立った賛同者は皆、集結した」  シエレンは名残惜しそうにイリナスの前髪を、そっと指で撫でると、スリングから抱き起こして、カエキリア卿に渡した。  カエキリア卿は慣れた手つきでイリナスを抱きかかえ、シエレンを振り返る。 「護衛として着いてきてくれ。イリナス皇太子はお前に懐いている。そばにいれば安心なさるだろう」 「かしこまりました」
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