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「きみ、後でこのシャレット嬢がわたしを訪ねてくるから、必ずご案内するように」
秘書は眼鏡の向こうから、ちらりとシャレットの様子を見て頷いた。
「かしこまりました」
軽く手を振りながら客席に行くオステガル卿を見送り、シャレットはぬいぐるみが入った籠をそっと床に置くと、廊下の隅に何気ない様子で近寄って壁にもたれた。
そこはシガレットコーナーで、タバコの煙が漂ってくる。
「エマウ。タバコはやめたんじゃなかったの?」
煙臭さにしかめっ面をしながら、シャレットはエマウを見た。
ぐっと胸元が開いた濃紺のベルベットのドレスは左足の奥深くまでスリットが入っている。
色の悪い、粗末なつくりの義足が露わになっているが、そのきわどい角度に周囲の視線集まっていた。
「失礼、マダム。身体検査をしてから客席へお入りいただきたいのですが」
憲兵が話しかけてきた。エマウは火がついたままのタバコを片手に、優雅に両腕を広げた。
「ええ、どうぞ。隅々までごらんあそばせ」
くすくすと笑みを含んだ声に、若い憲兵は顔を赤らめた。
エマウの体に触れる指先が微かに震えているのは緊張しているからだろう。
背中からウエスト、腰の辺りに来たとき、その手が止まった。
「これは……」
エマウが、さっとドレスの裾を広げた。
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