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「あなたがハトシェラプでリュヘル道士に命じた。凶暴化する前に自分を殺せと……そう命じたのです」
許しを求めるような響きになってしまうのに、ジェフリはいらだった。
女王アルテミアの依頼を受けて、こんなところまでやってきたのだ。
そして、王殺しという大罪を人に押し付けてもなお、王としての尊厳を保とうとする歴史に腹が立った。
なんとか自分の中から怒りを引き出し、振り上げた爪先を女王の魂の在処に突き立てるのだ……そう言い聞かせ、ぐっと爪先を胸の辺りに狙いを定めた。
「あなたが死んでしまえば、ユディア王女は一人で闘うしかなくなる。それでもこれが、最善なのですよね」
そう言った瞬間、だらだらとよだれを垂らし続けていた女王の瞳に、ちかりと光が灯ったように見えた。
その威厳ある表情は、ユディア王女にそっくりだった。
ぐっと爪先を女王の胸元に沈み込ませた……。
爪先が魂の在処を求めてさらに奥深くへと侵入しようとした、その時。
ぷすりとジェフリの肩に黒い羽が突き刺さった。
その小さな痛みはすぐさま腕全体を痺れさせた。
「毒……?」
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