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「……俺が魔の手を遣って女王の命を奪おうとすれば、リュヘル道士が姿を見せると思ったんですよ」
ジェフリの言葉を聞いてリュヘル道士は形の良い眉をくいっと高く上げた。
その、いつも通りの表情を見て、ジェフリは半ば呆れ、そして安心している自分に気がついて苦笑した。
「何がおかしいのだ」
「いいえ。あなたはいつも違う顔を見せるから、どれが本物なのだろうかって思っただけですよ」
「そんな事を考えていたのか。全く無駄な考察だ……私は複合型なのだ。様々な形態を持っている。共通項など存在しない」
「だから吸血鬼を従える事もできるんですか?」
「そう……吸血鬼を手下にできるのはマグラファイ……ミステスだけだ」
リュヘルの黒い翼が、光に包まれたように見えた。
するりと脱皮するように白い羽がびっしりと現れ、黒い皮膜の翼から白い翼に変貌した。
ぴたりと、ミステスの歌声が止まる。
ぼたぼたと海に落下してく吸血鬼の体から、嫌なにおいがする油が滴り、海面が油膜で覆われていた。
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