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=”=*終章”
朝の気配でジェフリは目覚めた。
まだ夜は明けていない。
いつまででも眠っていられるほど、朝起きるのが辛い年頃なのだが、早起きも習慣となってしまえばなんと言うことは無い。
ベッドから起き上がっても寒さを感じなかった。
それほど季節が動いたのだった。
素足のまま床に降りて、着替えを済ませる。
グレーのフランネル素材のボタンダウンシャツに、同じくグレーのズボン。新品の靴下と革靴。
ジャケットは、この高等技能訓練校の制服で、元々は軍律学校の制服だった物をお下がりでもらった。
まだまだダステレミア王国は物資が不足している。
学校の生徒全員分の制服を揃えるのに、教師達が奔走してくれた結果、軍律学校を去る生徒達からジャケットの寄付をしてもらったのだった。
お下がりとはいえ、仕立ても生地も上等で、ジェフリは満足していた。
クローゼットの扉を開けて、育ての親であるニコライ神父から餞別でもらったツィードのジャケットの袖をそっと撫でた。
腕の辺りに大きな穴が開いてしまっている。
背中のほつれはなんとか補修できたのだがその他の場所を綺麗にするには専門の職人に頼まなくてはならない。
まだ、そんな余裕が無いのでしばらくは大切に保管しておくつもりだ。
ネクタイを締める手つきも慣れてきた。
はじめは何度やってもうまくいかなかったけれど、できるようになってしまえばごく自然に結べる。
そんな、小さな達成感が毎日に弾みをつけてくれている。
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