=”=*終章”

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「早く行かないと、時計塔の鐘が鳴っちゃうよ」  大あくびをしながら、シャレットが指さした。  その先にはスピノザ救貧院の時計塔が建物に見え隠れしながら微かに姿を見せている。  三人に手を振り、ジェフリは走り出した。  スピノザ救貧院の時計塔を目印することで、やっとミュリスの街で迷わなくなってきた。  いくつかの角を曲がって近道も覚え、門番の老人が居眠りをしているのを起こさないように気をつけながら、いつものようにまず水場に立ち寄る。  金属製のじょうろに水をくみ、まっすぐにリュヘル道士(クライエン)の個室に向った。  ノックする必要は無い。  そう言われているので、そっと扉を開けると、狭い部屋の床に胡座したリュヘルはすでに瞑想に入っているのもいつもの風景。  顔を軽く上向きにし、黒い髪が耳の方へ流れている。  高い天窓は太陽の光を真っ先に浴びるための設計だ。  今はまだ、星が瞬いているが、次第に空は薄く絵の具を刷いていくように明るんでくるのだった。  瞑想中のリュヘルは、ジェフリがうっかり水をかけてしまっても集中を解くことは無い。  朝日が昇り、その白い端正な顔を照らしてはじめて目を開いてジェフリを見るのだ。  それまで、ジェフリはまず日課の窓際に並べられた三つの植木鉢に水をやる。
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