=”=*終章”

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 ひょろりと生育の悪い葉が伸びているだけだったのが、今日は違った。  ふっくらとつぼみが先端にふくらみ、黄色い花びらがゆるやかに口先を開いていた。  世話をしていたのだから、花が咲くと嬉しい。  ジェフリは顔を近づけた。  ふわりと薫りが漂う。その匂いを嗅いでジェフリは顔をしかめた。  この匂いに覚えがある。  そう思いながらさらに顔を近づけると、黒い小さな蜘蛛が花びらにすがりついていた。  蜘蛛の手足はぶるぶると震え、よく見ると三つの鉢、全部に蜘蛛が這い上がってきている。  指先で弾いてしまおうかと手を伸ばしかけて、その匂いの記憶が蘇った。  そして、この蜘蛛がグローリス嬢の肩に留まっていたのも同時に思い出した。  手に持っていたじょうろから水が滴る。  慌てて持ち直し、蜘蛛を避けながら植木鉢に水をやると、夜明けの気配が空に広がった。  ゆるやかに夜の影を太陽の光が覆っていく。  夜明けを待ちわびる気持ちがそう感じさせるのか、太陽の出現はいつも突然で、そして揺るぎない。  天窓を見上げると、昨日、リュヘルに言いつけられて窓を磨いたおかげで、一点の曇り無く光が差し込んでくる。  光の先端で、リュヘルは目を開いていた。 「花が咲いたな」  そう言いながら胡座を解く。  立ち上がるまでに時間がかかるのは、足が痺れてしまうからだときいて驚いた。
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