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「今日も足が痺れて立てないんですか?毎日瞑想しているのに……」
「人の体の構造を考えてみるのだ。慣れなどで足が痺れなくなるなどあり得ない」
ぐいぐいとつま先を回しながら、ジェフリを見上げてくる。
黒い髪はいつものように艶やかに朝日を弾き、白いローブの肩にかけられたストラテラスは厳かに古代の文様でリュヘルを取り巻いていた。
「この花って制御薬の匂いがするんですけど」
思い切って聞いてみると、リュヘルはあっさり頷いた。
「そうだ。花が咲いたのは初めてだが、その植物が制御薬の主成分であり、また軍隊でHALLと呼ばれた向進薬の材料でもある。まだ、その3株だけでは何とも心許ないが……いずれは自家生産できるようにならなければ、このスピノザ救貧院の末期患者達に薬を提供することが難しくなるだろう」
リアド・トラクス連合軍とダステレミア王国の関係は冷ややかに互いを探り合い始めている。
その結果、必要な医薬品などが手に入りにくい状況が続いている。
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