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「ジェフリ、エマウ女史の新聞を持ってきてくれたか」
「はい、これです」
リュヘルはノースタトゥ新聞を受け取ると、いきなり三面から読み始めた。
「ミステス・フランクリン女史。体調不良によりコンサートを中断……なるほど。こういう書き方もあるわけだな。やはりエマウ女史は賢い人だ」
「さすがアンビュロフの護符を持つ人ですね」
「その通りだ」
国立総合大学の講堂で開催されたコンサートは、プログラム半ばで近衛兵団によって中止されたのだ。
彼らは皇太子イリナスを王にと要求を掲げ、また、民主的な選挙の実施を紳士淑女に呼びかけた。
会場に集まった人々は熱狂的に賛同し……無論、カテルやエマウの同志たちが大勢観客席に潜り込んでいたのだが……その場はクーデターによって占拠された。
「コンサートに来ていたリアド・トラクスの要人たちはすぐに宿泊先のホテルに逃げ込んだのですよね」
「そうだ。そして女王アルテミアの護送計画が失敗したと知り、すぐさま大公フィッツジェラルド殿下に助けを求めようとしたところを、レジスタンスのメンバー達に取り押さえられたという顛末だな。よくもこれほど、計画通りに進んだものだ。何一つのブレも無いとは恐れ入った」
ふざけているのではなく、本気で感心している様子だ。
ジェフリにはそのクーデターの意義などは分からない。
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