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大公フィッツジェラルドがダステレミア王国の王になろうとしていたのをリアド・トラクスが後援していた……その計画に邪魔だった妻である女王アルテミアを排除し、さらに自分の血を分けた皇太子イリナスとユディア王女も抹殺しようとしていたとわかり、背筋が凍るような思いがした。
それほどまでに王になりたかったのか。
それならば、家族を不幸に陥れる必要など無く、勝手に王を名乗れば良かったのだ……ジェフリには、そう思えてならなかった。
この事について考える度に、頭の中が熱くなり思考が脱線して考えがまとまらなくなる。
王になるのがどれほど魅力的であっても、自分の家族すら邪魔ならば排除するという冷徹さは、どう考えても納得できるものではなかった。
リュヘルともっと話をしたいと思いながら、心の奥で迷走している気持ちは言葉にならない。
その代わりに、ジェフリは植木鉢に顔を近づけて匂いを嗅いだ。
「やっぱり制御薬の匂いだ。甘くていい匂いだからかな。蜘蛛がたくさん寄ってくるんですね」
「ふむ……昆虫にしろ、動物でもそうだが。匂いというのは視覚よりも本能に呼びかける力が強いという。同族を見つけたり生殖の時期を見定めたりするのに必要な性質だ。ジェフリ……HALLの事を調べに行くのだな」
「はい。まず、育ての親のニコライ神父に会いにアウグストス教会に行ってきます。リュヘル道士が列車の切符を取ってくださったので、今から出発して、明日には返ってきます」
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