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マサキ・ハル。シノブ。
ジェフリの両親の名前だ。
写真しか残っていないが、HALLと書き記されていたのは間違いない。
竜人のジェフリを育ててくれたニコライ神父に、両親の事を尋ねてみようと思ったのは、向進薬の名前を聞いた時、微かに記憶が蘇ったからだ。
記憶の真偽を確かめるためには、ニコライ神父に会って話を聞く必要があった。
「列車の切符はハンベルト少佐が取ったのだ。今回の件の礼だと言っていたから気にすることは無い。さあ、今日はもう用事は無いから駅に急ぐといい。それと、マーガレト院長が台所に寄るようにと言っていた。サンドウィッチのお弁当を作ったから持って行くようにとの事だ」
ジェフリは嬉しそうに頷くと、部屋を出て行った。
リュヘルはようやく立ち上がり、植木鉢にかがみ込んだ。
その視線の先で、ジェフリが大きく手を振り、そのまま駆けだしていく。
「ヴィクテルム・ラーム・ラーム……リンセットラに加護を与えたまえ……」
賛歌を口ずさんだところで、ドアがいきなり開いて、近衛兵団の制服を着たハンベルト少佐が入ってきた。
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