168人が本棚に入れています
本棚に追加
「ジェフリはいるか」
「たったいま、出発したところだが。お前はクリール・ララに向うのでは無かったのか」
「グローリスからしばらく来ないでほしいと言われている。女王陛下の容態もまだ安定しないようだからな」
「北極海の孤島、ラーム信仰の原点である聖なる場所だ。女王陛下もグローリス嬢も必ず健康を取り戻されるだろう」
「石を積み上げた家しか無い場所でか?用水を雨水に頼っているようでは風呂にも入れない。そんな不衛生なところで静養などされずとも……」
そう言いつつ、ハンベルトは天窓から降ってくる太陽の光に顔を向けて目を閉じた。
「……太陽は暖かい」
「その通りだ。大地を潤し生き物を育むのは太陽の光あっての事。いま、お前が感じているぬくもりは、すべての源につながっている」
ハンベルトは長く息を吐ききると、首元からネックレスを引っ張り出した。
先には二つの金の指輪が重なり合っている。
その微かな音に耳を澄ませ、
「グローリスのような急性変貌した者でも少しは進行を食い止められるのだろうか」
そう、尋ねた。
問いには答えず、リュヘルはまた口の中でラームへの賛歌を唱えた。
最初のコメントを投稿しよう!