=”=*終章”

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 「いや。この葉書の差出人の住所は、商工会議所になっている。あのときジェフリはまだ家が無かったから、知っている住所を書いたんだろう。当然、この葉書が戻ってきたのも商工会議所だったはず。お前はいつからエマウの使い走りをするようになったんだ?」 「うるさい。用事があってたまたま寄ったら、この葉書を渡されたんだ」  ハンベルトは葉書の絵柄……バレッサ地熱発電所とその周囲のフィヨルドを精密に描いた風景画にじっと視線を落とした。 「吸血鬼はバレッサ地熱発電所の開発によって外の世界にはみ出してきた。そうだったな」 「復興を焦っていた大公フィッツジェラルドは、そうと分かっていて地獄の門を開いてしまった。しかし。地獄の門を護っていたミステスたち……マグラファイ(カササギの翼)をそそのかした者がいる」 「それは大公フィッツジェラルドではないのか?」 「まだ断定できない。ミステスたちには吸血鬼を統率して、地上を攻め滅ぼすほどの考えは無いのだから……女王アルテミアが祭祀として命じたと考えるのが一番すっきりする。同様の前例が太陽の問答(セッタウム)に記されているからな。だが、病んだ女王にそんな采配ができたとは思えない」 「では、女王に匹敵する力を持つ者……それは誰だ?」 「ユディア王女が第一候補だ」  リュヘルの言葉に言い返しそうになったが、ハンベルトは代わりに銀色の筒を取り出した。
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