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 アイドルは卒業するんだから、ファンだって卒業することがあってもいいと思う。 「私が初めてATARAXIAと出会ったのは、センターのリオくんが出ていたドラマがきっかけでした……」  アイドルの卒業公演を真似て、化粧水のボトルをマイク代わりにする。 「いい演技をするなと思って、ドラマの役だけでなく、リオくんというそのひと自体にも興味を持つようになりました。早速CDを買いました。でも歌を聴いて印象に残ったのは、一番いいところを歌っていたリオくんではなく、サビへの助走の、ほんのワンフレーズを歌っていた声でした」  それが、ショータくんだった。  ATARAXIAの中で、きっと、ショータくん推しは一番少ない。  ショータくん推しなのと言うと、大抵、一拍、間ができる。そのあとに言われる言葉は決まって、「ああ、確かに……いいひとっぽいもんね」もしくは「ひとの好みはそれぞれだからね」  同じATARAXIAのファンが集まっているはずなのに、コンサートに行くと毎回、本当にATARAXIAのコンサートに来ているのだろうかと不安になった。  でも、赤や青のうちわ(赤はリオくん、青はユキヒトくん)が揺れる中、ぶんぶんと必死の形相で緑(ショータくん)のうちわを振り回しているひとを見ると、それも何か違うな、と思ってしまう。同担のひとと話しているときが一番、胸が、きしきしした。
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