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紙袋には、ちっとも捌けなかったティッシュがいっぱい入ったままだ。「ただいま」と誰もいない部屋に呟き、荷物を置く。バランス悪く紙袋は倒れ、ティッシュが廊下に散らばった。音もしない。気分的にはどさり、という感じだったのに、疲労感に対して軽すぎる音。
キッチンには、リオくんがいた。
もうだいぶ、ありとあらゆることに驚かなくなっていた。
リオくんはガスをつけていた。リオくんのイメージカラーは赤だけど、青も意外と似合うんじゃないかと、ガスの青い炎を見て思う。
リオくんの手には雑誌の切り抜き。それがみるみる、炎に食われていく。もうなくなる、というすんでのところでリオくんはそれを流しに放り投げる。じゅっ、と音がし、焦げ臭いにおいが広がった。
「未練がましいな、いつまでもぐずぐずと残してないでとっとと捨てちまえよ」
「……ゴミの日がまだだったから」
「俺が手伝ってやるよ、燃やせるもんは燃やしちまった方が早いだろ」
「そうね」
何故か素直に従って、凪子も切り抜きを燃やし始める。その切り抜きのほとんどがショータくんであることに対して、リオくんは特に何も言わなかった。
燃える。燃える。
心をひとつに、同じ炎を見つめている。これは小さなキャンプファイヤー。
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