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リオくんは、もしかしたらグループを脱退するんじゃないかという噂がある。それも仕方ないのかもしれない。リオくんはカリスマ性がありすぎた。上手くかみ合っていないんだろうな、というのは、フリートークの雰囲気からすぐ分かる。リオくんが話したあとには不自然な間が生まれてしまう。だから最近リオくんは、メイキングでもめっきり喋らなくなってしまった。
「こんなものまで集めていたのか」と、リオくんはおもむろにガムの包み紙を、空高く放り投げた。包み紙はまるで、コンサートのときに打ち上げられる紙テープのようにきらきら、舞った。
「こんなもの、と思うでしょ」
リオくんの眉がぴくりと動いた。
「そう、こんなものまで集めてしまうの。何でも欲しくなっちゃうの。紙切れでも、ゴミでも、価値あるものに変えてしまう。それがアイドル、ってものだと思う」
アイドルが好きだった。
きらきら輝いて……輝こうと頑張っているひとたちが好きだった。オリコン1位、連ドラ主演、五大ドームツアー……そんな夢を叶えていく彼らに、自分の叶わない夢を託していた。でも。でも一方で……
そんな彼らを……
そんな簡単に愛を請える彼らを……
いつしか猛烈に、妬んでいた。
凪子は床に散らばっていたティッシュをひとつ、リオくんに向かって差し出した。
「あなたがこれを配ったら、きっと五分もせずになくなってしまうよ。そんなあなたの力が羨ましい」
リオくんはそれをじっと見つめると、人差し指で何か書くような仕草をして言った。
「オークションに出すなよ」
もしかしたらサインだったのかもしれない。
じっと見ていれば何か見えてくるかもしれないと思って、でもやっぱり駄目だと諦めて顔を上げたとき、リオくんの姿はそこにはなかった。
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