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 言いたいことをぐっと飲み込むとき、いつも思い出すのは、他のメンバーから一歩引いたところではにかんでいるショータくんのことだった。メンバーが盛り上がると大体ワンテンポ遅れて、手を叩いている。CDジャケットやグラビアの撮影でも、ショータくんが前列に来ることはない。バラエティでは後列で、お尻ののせどころに困るようなスツールに座らされていて、前列のメンバーばかりアップになるから、ショータくんの顔よりも脚を見させられている時間の方が長い。  ショータくんみたいでもいいんだ。前へ前へ行くばかりがキャラじゃないんだ。そしてたとえ控えめでも、自己主張が下手くそでも、見てくれるひとはいるんだ。 (……そう、私が、あなたを見つけたように) (私のことも、見つけてくれるひとがいるはず、きっと、どこか)  ショータくんのファンをやめても、やめなくても、明日は来るし、仕事はある。  私の仕事はティッシュ配り。  時に舌打ちされ時に罵倒され大抵無視される、それが私の仕事。
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