冷やしなさい

11/13
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「どっちでもいいからさー。付き合ってよ。今日だけでなくて夏休み中、ここ時給いいから、お財布買ってあげるよ」 逢花ちゃんはカチンと来たようだ。口調を強めて喋り始めた。 「それってバカにしてるんじゃない?どちらかハッキリ決めてよ。これじゃ、わたしと沙織だって仲が悪くなっちゃうじゃない」 沙織も同感だ。腹立たしさと悲しみが同時に胸に込み上げてきた。 「だって、二人共僕の事好きなんだろう。いいじゃん、あっ、どうせなら三人で付き合う?」 サー。 智哉君の頭に冷たい氷がかかった。その後ろには先程のカッコいいイケメン二人組が立っていた。 「さっきから聞いていたけど、随分酷いんじゃないか?これで頭でもひんやり冷やせよ」 「何するんだよ」 智哉君は掴み掛りそうな雰囲気だ。 「何を騒いでるんだい」 声の主を見るとパン屋のおじさんが仁王立ちに立っていた。 「お父さん、こいつ酷いんです。女の子を揶揄って」 「そうそう、お父さんからも何か言ってやってくださいよ」 お父さんって事はこの二人は息子なのか。確かに似ている。 「君はアルバイトの学生さんだったね。ダメじゃないか、女の子をいじめたら」 「別にいじめてるんじゃありません、告っただけで・・・」 智哉君はゴモゴモと何かを言って、バイトも辞めると自転車に乗り去っていった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!