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オレが働く会社、株式会社Paper-holicの東京支店と、ヒロミさんの会社、株式会社RFD(リサーチフォードリームの頭文字だそうだ)が入っているのが同じビルというミラクル。
「マジ?そっかー!俺、今日も見たよー。わぁーすっげー偶然!」
聡明で、順序だててものを言い、人を引き付ける声をしていると思ってた。けど興奮すると単語を並べただけっていうか子どもっぽいっていうか。その口調の方が嬉しい。ヒロミさんの本心が見える気がする。
「ずっと引っかかってたんだよー。あー、すっきりしたー。驚いたねー!もしかしてすれ違ったり同じエレベーター乗ったりしてたかもしれないね。」
「そーね。」
「えー。もっと感動しろよー(笑)俺だけめっちゃテンション高いの恥ずかしいじゃん(笑)」
「これでも驚いてるよ?でもさ、同じところで働いてて、同じような時間に仕事終わって駅の近くで飲んでんだからありえないことでも無いんじゃない?」
・・・あぁ、もう。
嬉しいくせに。
偶然にしちゃ出来すぎた出会いに少し浮かれてるくせに、なーにが「ありえないことでも無いんじゃない?」だよ。ほら見てみろよ、ヒロミさんしょぼくれてんじゃねぇか。
ガキかオレは。
「あー、うん。そうだね、びっくり……だよね?」
取ってつけたみたいなオレのフォローにはご満足頂けなかったようで、ヒロミさんは低く「違うでしょ?」と言い顔を上げた。
「ヒロミ……さん?」
真っ直ぐにオレを見るその顔からは考えてることが読み取れないしどちらかというとその真顔は苦手だ。蛇に睨まれた蛙、ってこういう時に使うんだろうか。
ゴクリ。
唾を飲み込む音がやけに大きく頭ん中で響く。
「違うでしょ?」
何が、どう、違うんだ?
「運命だね……って言わなきゃ(笑)」
・・・あーもう。
降参。
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