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「昨日は早く上がらせてもらってありがとうございました。何か俺に手伝えることはありますか?」 今朝。出勤してすぐのミーティング後。自分のデスクに戻る岡田先輩を追いかけるように背後からそう声をかけた。 気にすんなって。あらかた片付いてるから。と振り返ってキメ顔をする先輩。ちょっとクマが出来てるから遅くまでオフィスに残ってたんだろう。 「それよりどうだった?」 「はい?」 「昨日だよー。デートだったんだろー?」 「あぁ!たの……」 ・・・やっべ。 「たの?」 「あ、いえ、何でもないです。」 真っ先に牧野さんの顔が浮かんで、今のなしなし、と首をブンブンと振った。聞かれたのは彼女とのデート(そもそもあれはデートだったのか?)のことで、その後の飲みのことじゃない。 「いやぁ、実は昨日彼女と別れたんですよねぇ。」 「えっ、そうなの?あ、ひょっとして別れ話するから早く切り上げた……とか?」 「いえ、付き合って1年の記念日だったんですけど。」 「うわ。その日に振られるとか、泣くな、俺なら。」 「いやいや、振られたんじゃないですよ?どっちかで言えば俺が振ったんですって。……まぁ、その前から忙しくって何度もデートをキャンセルしてたんで、愛想尽かされてたんだろうから振られたってことになるのかな……」 でも、仕事に対する熱量の違いとか、何かトラブルがあった時にどう動く人間関係なのかとか、彼女の本心が見えたっつーか、全部をひっくるめて相性が悪かったんですよ、彼女とは。 と、言い終わった時にはもう岡田先輩は椅子に腰かけていて、朝から愚痴っぽく語ってしまい居心地悪くデスクの前に立つ俺。を見上げて。 「美味いもん食って忘れろ!な?」 ・・・先輩はそうするんですか?めっちゃ単純じゃないですか。 「ま、ええ、はい。」 戻ります。と頭を下げて思う。 すっかり頭から抜けてたし昨日というワード検索で最初にヒットしたものは、稀有で新しい出会いをした牧野さんの綺麗な顔と美味しかった酒で。それをつい楽しかったですよ、と答えそうになっていた訳だから。 人のことは言えない。俺だってかなり単純だ。
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