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「あれから家には帰れたのか? 方向音痴」 「それ聞き飽きた! マジで!」 「迅、雷の事知ってんの?」 「昨日こいつが迷子になってんのを保護した」 「保護なんかされてねぇ!」 「ぷっ…。 雷、なんで保護されたんだよ」 「されてねぇってば! ちょーっと道に迷ってただけ!」 「心細くて泣きそーだっつって俺に助けを求めてきたよな? そっちのがウケる」 迅にニヤニヤ笑われて、俺は盛大に嫌な顔をして見せた。 せっかく昨日許してやったのに! ムカつく男だ! 「ウケねぇよっ。 なぁ翼、こいつ意地悪しか言ってこねぇんだけど!」 「迅は昔からだよな」 「ヤンキーの風上にも置けねぇな。 腹立つから癒やしを求めてにゃんこ探しに行こーっと!」 「なに、何探しに行くって?」 「え? だからにゃんこ……いや、何でもない」 しまった…! つい口からポロッと出た単語に、慌てて下駄箱に上履きをしまう。 これ以上ここに居たらさらに揶揄われる。 そんなの嫌だ。 「雷、お前の方からイジられ材料差し出してどうすんの」 「俺は何も言ってない! 翼、また明日な!」 迅が表情でさえも俺を揶揄ってきていて、でもそれはケンカを売られてるわけではないから手が出せない。 この街に来て二日連続で、迅には俺の弱味ばっかり見せてる気がする。 ケンカを吹っかけてくるわけでもないのにイライラさせる迅となんか、関わりたくない! 「…駅まで一緒行こって言ったんだけどな」 「にゃんこ探すから一緒には帰れねぇんだろ」 「あ〜そうか、にゃんこな」 「うるせぇぞお前ら! 聞こえてんだからな!」 俺はバカだ! うっかり口を滑らせたばっかりにその日以降、迅と翼から「雷にゃん」って最悪なあだ名を付けられて呼ばれる羽目になった。
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