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そのランニングの様子を感心しながら目で追っていたら、視界に飛び込んできたのは、鮮やかな黄色。
「あ、ひまわり!」
花壇の奥の方で、ひまわり達が見事な花を開かせていた。みな揃いも揃って真っ直ぐに空を見上げている。今まで全く気づかなかったから、開花したのはつい最近なのかもしれない。
「ひまわり? あ、ほんとだ」
結城くんもひまわり達に視線を投げる。
「夏って感じだよね」
「だな。てか、花とか好きなんだ?」
「うーん、特別好きでも詳しくもないよ。でも、ひまわりは好きかな」
「へえ、ひまわりね」
彼は何故か楽しそうに笑った。
「なんか宮田って、ひまわりっぽいよな」
「え、ひまわりっぽい? わたしが?」
「うん。だって宮田って、い……」
「こら、そこの二人! サボってないで練習しなさーい」
結城くんの言葉を遮ったそんな声に振り向けば、音楽室の入口から部長が怖い顔を覗かせている。わたし達は慌てて準備室に入った。
──ごめんね、結城くん。本当にごめん。
まさか、その何気ない言葉の続きを聞かなかったことを、こんなにも後悔することになるなんて。
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