第一章

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中学一年生、春──。 初めての制服に身を包んだ瞬間、急にお姉さんになった気がして、鏡の前でフフンと気取った顔をしたのを覚えている。 でも、入学式で撮った写真をあとで見たら、セーラー服のサイズが合っていないのか、着ているというより着られているみたいだった。それに、タイも少し曲がっていてダサい。これが後世に残るなんて。全力で撮り直し希望。 実際、小学生だった三月から一ヶ月しか経っていないのに、突然変わるわけもない。入学した途端、背が伸びたり髪がロングになったりしたら逆に怖い。 好きな食べ物は鶏の唐揚げ。いちばん好きな色はずっと黄色。花はひまわりが好き。好きなアニメも好きなアイドルも変わらず。誕生日は七月のままだし、血液型もO型のまま。 宮田(みやた)桃花(ももか)という名前だってそのまんま。中学生になったからといって、宮田ひまわりにはなれない。ひまわりが桃花より大人っぽい名前かどうかは別にして。 とにかく、わたしはわたしのまま。制服を着なければまだまだ小学生に見られてしまう、正真正銘のお子様なのだ。 けれどそんなわたしの身に、さっそく大人の階段を一歩のぼるような出来事が起きた。 初恋。しかも、一目惚れ、してしまった。
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