一回目

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一回目

 最初に告白されたのは、二年の春だった。  サッカー部でマネージャーをしていた私は、二年になってから、新しく入ってきた一年坊主たちの練習の面倒を見ることが多くなっていた。  基礎メニューをこなさせ、よく外されるボールを拾いに行き、水分補給を徹底させる。ちょこっと厳しく当たっていたのが彼らにとってはそんなに嫌だったのか、割と嫌われていたような気もする。  そんな中、逆に私を見て一目惚れしてしまったなどとぬかすバカもいた。それがアイツだ。 「センパイ、俺と付き合ってくださいっ!」  練習が終わり、グラウンドでひとり後片付けをしていると、アイツが近付いてきて、少しもじもじしてからそう言った。  気温はあんなにも快適だったのに、そう言われたときの私の不快指数は梅雨にも劣らなかった。 「……は?」 「えっ……さ、最初に見たときから好きでした! 俺と――」 「いや、聞こえたけどさ……」  そういえば、中学のときにも私に告白してくるような奴はいた。そのときも気持ち悪いと思ったけれど、数年ぶりのそれは、たぶん最初に感じたのよりも数段気持ち悪かった。  やたらと多い一年坊主の一人くらいにしか思っていなかったアイツが、勝手に私の領域にズケズケと踏み込んでくる。それがものすごく嫌で嫌で仕方なくて、私はこう返した。 「ごめん、無理」  そのまま私はそこから逃げた。  ちょっと悪いことをしたかもしれない……と、その一回で終わっていたら思っただろう。
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