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一三回目
あろうことか、以来アイツは週に一、二回くらいの頻度で私に告白してくるようになった。
いつの間にか他の部員やマネージャーにもそのことがバレていて、私は散々いじられた。
「聞いたよー、モテ期到来だってねぇ?」
「やめてください……」
特に、当時のキャプテンと付き合っていた先輩マネージャーは、この件に関してしつこく突っ込んできた。
「なぁに? それともキミは年上じゃなきゃイヤってタイプかなぁ?」
「別に、そういうわけではないですけど」
「じゃあいいじゃーん! まずはお試しでーとかでさぁ」
お試しとか言われても。
実際、アイツは顔も悪いほうじゃないし、とても誠実な良い子だ。サッカーの実力も高く、監督も今年のルーキー戦ではアイツにかなり期待しているらしい。
後輩マネージャーにも同級生としての評価を聞いてみたが、「成績も良いし優しいし、女子の間でも結構人気高いですよ」とのこと。
だからというか何というか、何で私なんか、と少し思う部分もあった。
「そんなん気にしないでいーんだよ。恋は理屈じゃないぜぇ、ルーキーさんよぉ」
「何キャラですか……」
無責任に私とアイツをくっつけようとする先輩には、恋の悩みとかなかったんだろうか。
その年のルーキー戦は、本当に大健闘だった。
準決勝進出をかけた試合で、アイツが入れたシュートが決まったかと思ったらオフサイドを取られ、監督と一緒にキレ散らかした。
結局判定は覆らず、試合は負けた。それでも我が校としては久々の好成績だったが、私にそれを喜ぶ余裕は、そのときにはなかった。
「あのっ!」
そんなタイミングで、アイツに呼び止められた。
「今日、俺のために怒ってくれて、ありがとうございました!」
「別に……」
アンタのためじゃない。私はあくまで、フェアな判定を求めただけ。目が節穴のくせにやたら偉そうな審判の顔が蘇る。
「やっぱり好きです! 付き合ってください!」
今日で、一三回目の告白。当然、断るつもりだった。いや、断りはしたのだけど。
「……そういうの、もういいから」
「え?」
その日は少し、疲れ過ぎていた。
「もうやめてって言ってんの! キライ! アンタのことなんかキライ!」
口の動くがままに叫んだ。アイツの顔は見なかった。
そのまま私は走り去って、その日はアイツのことを見ないようにした。アイツももう、私に話しかけてはこなかった。
帰ってから、ベッドで少し泣いた。
「……キライ」
デリカシーのないアイツが。私の気持ちを全然考えてくれないアイツが。
「キライ」
私なんかを好きになってしまったアイツが。何度断っても諦めてくれないアイツが。
「キライ……」
どうしようもない、自分が。
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